<東京デフリンピック>あうんの呼吸で金メダル目指す デフテニス宮川きょうだい
スポーツ - 2025年11月12日 18時00分
11月15日に開幕する、聴覚に障害がある人のためのオリンピック「東京デフリンピック」について、注目選手の情報をお伝えします。今回は兄と妹でペアを組み、デフテニスのミックスダブルスで金メダルを狙う宮川きょうだいです。
デフリンピック開幕まで1カ月を切ったこの日、大会の会場となる東京・江東区の有明テニスの森で練習を行っていたのは、宮川楓雅選手(23)と妹の百合亜選手(21)です。デフリンピックが近づいてきた中、今の気持ちを聞くと、兄の楓雅選手は「1カ月も切って、やばいなと率直に思っている。もう少し練習したいなと思う」、妹の百合亜選手は「私も結構焦りを感じている。大学の部活をちょうど引退した時期で、練習できる期間が少なくなってきてしまったので」と語りました。
2人は百合亜選手の誘いで3年前に混合ダブルスのペアを結成し、2024年11月には東京で開かれたデフリンピックの前哨戦となる国際大会で優勝しています。デフテニスの基本的なルールは“聞こえる人のテニス”と同じですが、打球音などが聞こえない・聞こえにくい状態でプレーをするため、ダブルスの前衛はペアがいつサーブを打ったのか目視するまで分からず、相手からのレシーブに備える時間が短いという点で特に難しいそうです。ペアと息を合わせることが重要となるこの競技ですが、2人は試合中は最低限のコミュニケーションしか取っていないように見えます。
宮川きょうだいをよく知る日本ろう者テニス協会の森本尚樹理事長は、2人はどちらかがミスをしても決して責めず、ミスを取り返してくれるという信頼関係があるからこそ、やりとりが少なくてもあうんの呼吸で試合に挑むことができていると話します。森本さんは「生活環境も、家に帰っても同じだから、機嫌が良い時も機嫌が悪い時もそういう気持ち伝わるから無駄な会話がない」と評します。2人も気兼ねなく意見を言い合える関係は心地よいと話します。楓雅選手は「他の人よりも完全にやりやすいし言いやすい。言いたいことも言えるし、聞きたいことも聞ける。最高のペア」といいます。
一方、兄と妹ならではの苦労もあるそうです。百合亜選手が「(プレーがうまくいかず)イライラする時があり、そういう時に結構当たってしまう。まあ、一方的にではあるんですけど」というと、楓雅選手は「この間の試合から妹は調子が悪く、すごく怖いんですよ。本当に怖いから、話すのも怖くて」とおどけました。そういう時はどうするのかと尋ねてみると、楓雅選手は「いや、もうそっとするしかない」と笑いました。百合亜選手は「試合中励ましてくれることがあるので、そこを自分が真摯(しんし)に受け止めて気持ちを切り替えられるよう、デフリンピックまでにはしたいなと思ってます」と語りました。
きょうだいペアで臨む初のデフリンピックで、2人が目指すのはもちろん金メダルです。特に百合亜選手は前回=2022年のブラジルデフリンピックで代表に内定していましたが、開幕のおよそ2カ月前に新型コロナウイルスの感染拡大のため、デフテニス代表選手団が出場を辞退し悔しい思いをしていて、今大会への思いはより強いといいます。百合亜選手は「たぶん、海外の選手は日本のチームは強い、女子は特に強いと思っているので挑戦の気持ちで来ると思うので、そこに負けずに私たちも挑戦の気持ちを持って目いっぱい頑張りたい」と話しました。
<デフテニス 会場は「有明テニスの森」>
宮川きょうだいは2人で戦う混合ダブルスのほかに、それぞれシングル、ダブルスにも出場します。デフテニスの日程は11月16日から25日で、一日で他の種目に出る可能性もある試合スケジュールとなっています。会場は全て江東区にある有明テニスの森で、無料で観戦することができます。
(※動画内の2次元コードは「番組放送中のみ」の機能です。ご了承ください。)