世田谷一家殺害からまもなく25年 捜査を指揮した元署長の思い「自分の生涯を通じてやり尽くしたい」
事件・事故 - 2025年12月29日 16時30分
TOKYO MXの報道記者が注目したニュースを深掘り・生解説する「ツイセキシャ」。今回は発生からまもなく25年となる「世田谷一家殺害事件」についてお伝えします。
この事件は2000年の12月30日の夜から31日未明にかけて、世田谷区上祖師谷の住宅で宮沢みきおさんと妻の泰子さん、娘のにいなちゃんと息子の礼くんの一家4人が何者かに殺害された事件です。警視庁はこれまでに延べおよそ30万人の捜査員を投入し捜査を続けていますが、犯人の逮捕に至っておらず未解決のまま、まもなく25年が経過します。この容疑者の逮捕に向けて捜査を指揮してきた元警察署長の25年に渡る思いに迫ります。
(捜査を指揮してきた元警察署長の土田さん)
「(遺族は)25年間悲しみそして苦しみそして年ごとに事件に対する悔しさ。なぜなんだと(気持ちが)少しずつ高まっているという印象」
今月13日、事件が起きた世田谷区で開かれた早期解決を願う集会で話すのは、事件の捜査本部が置かれている成城警察署の元署長 土田猛さん78歳です。
(土田さん)
「辞めてあとは現役に任せたよと、こうはなりきれない。自分の生涯を通じて国民の生命身体財産を守るという警察法第二条の責務。この任務を果たし得なかったという部分が残っているわけだからそれはやり尽くしたい」
事件が起きた25年前検視官として4人の遺体を確認し、死亡した状況などの捜査にあたった土田さん。2005年から成城警察署の署長として捜査の指揮を執ってきました。そのかたわら日々の通報対応に追われる捜査員たちの勤務状況を改善することで世田谷一家殺害事件の捜査に割り当てる時間を捻出しようと、地域団体などと連携して区内に防犯カメラを400台設置。犯罪件数を減少させ、捜査員が事件に向き合える時間を大幅に増やしたということです。
(土田さん)
「(警察官時代は)時効になる前に何としても検挙という思いだけその一点でした」
しかし…事件は解決しないまま2007年に無念の退官となりました。
(土田さん)
「心残りは、必ず犯人はこの近くにいた足跡があったはずだと…」
そして2年後、土田さんは未解決事件の遺族らとともに時効制度の廃止を求める「宙の会」を設立。
(土田さん)
「警察官を退官した段階で7、8年が過ぎた。世田谷事件については15年という時効期間でしたので、もう時効になってしまうと。犯人に直結する証拠がありながらそれが捕まっていないとこれが迷宮入りになることについてはおかしいと自分なりに疑問を感じた」
活動が実を結び、翌年4月に改正・刑事訴訟法が成立し殺人などの凶悪犯罪の時効が撤廃されました。
事件が長引くほど遺族はやるせない気持ちを抱えると話す土田さんは、78歳になる今も遺族と警察の橋渡しなど事件解決に向けた活動を続けています。
(土田さん)
「被害者の声なき声望むところ遺族の希望。(代弁することが)警察OBである私のある意味では課せられた責任かなとという思いで声を大にしているというところです」