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子どもの性被害 カウンセリングで回復へ

福祉・教育 - 2023年11月30日 20時25分
犯罪被害者週間は、犯罪被害者への理解を深めてもらおうと定められたものです。子どもが性被害にあう事件が後を絶たない中、被害にあった子どもをサポートする団体が都内にカウンセリングなどの窓口を設けています。
「新宿区にあるこちらの施設では性被害にあった子供のための特別なカウンセリングプログラムを行っています」
「被害者支援都民センター」は、犯罪や交通事故などの被害にあった人を東京都と協働して支援する公益社団法人です。
裁判の付き添いといった刑事手続きを手助けするほか、電話相談やカウンセリングなど、精神的なケアも行っています。
「はい、被害者支援都民センターです」
都民センターへの相談件数は、昨年度は7503件と過去最多で、その半数ほどが性被害だったということです。
都民センターで相談員をしている臨床心理士の新井陽子さんによりますと、性被害を受けた人の多くは成人であるものの、近年、子どもの被害に関する相談件数が増えてきていると指摘します。
被害者支援都民センター臨床心理士 新井陽子さん:「習い事の先生や年長の子供たちからの被害が少なくない学校、小学校、幼稚園といった公的な学びの場での性被害も増えている」「(初期症状として)一番多いのが夜眠れないや怖い夢を見るといったことが多い」
そこで都民センターでは、性犯罪などの被害を受けた子どもを対象に、不眠などのトラウマ症状に特化したカウンセリングプログラムを実施しています。
臨床心理士 新井陽子さん:「いきなり怖かった体験を話すということではなく丁寧な準備をしてから子どもたちに話してもらう」「学び」と「語り」といった側面からプログラムが構成されている」
まず「学び」では、そもそも性被害や性暴力とは何かを、子どもが分かりやすいようにイラストを交えて伝えます。
臨床心理士 新井陽子さん:「ぎゅってしてほしいのかなしてほしくないのかな?」「こんな風に体に触れられたり見られたりすること、これも暴力の一つなんだよね。こういうのを「性暴力」という風に呼んでいます」
怒りや苦しい、楽しいといったさまざまな自分の感情をとらえる方法も学びます。
自分が経験したことを正しく理解することで、抱えている不安を整理できるようになっていくということです。
そして「語り」では、最終的には、自分に起きたことを絵本や物語にまとめることを目指し、あるトレーニングを行います。
(臨床心理士 新井陽子さん)
「被害にあった後、自分が悪かったのではないかとかああしていれば(被害に)あわなかったんじゃないかと」
「非常にネガティブに考え方が傾いてしまう傾向があるので」「バランスを取り戻すための考え方の練習をやっていく」
例えば・・・
ランチを食べようとした店が閉まっていたことに対し、
「食べたいものが食べられない」という考えをひっくりかえして…
「新しいお店を開拓できる」というように、発想を転換してポジティブな考えができるように訓練します。
(臨床心理士 新井陽子さん)
「最終的にその出来事(事件など)を振り返った時にすごくあれは悲しい出来事だったではなくて、自分は頑張った出来事だったというふうにひっくり返すことができると、子供たちは自分は大丈夫だ、これから僕たち生きていかれるという強い勇気につながっていくので大事にしている練習の一つ」
このプログラムを実施して10年以上が経ち…
これまで多くの子どもが心の平穏を取り戻しているということです。
(臨床心理士 新井陽子さん)
「あなたには回復する力があるよということあなたは悪くなかったよということを心の中にしっかりと持ちながら子供たちと会っています」
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お伝えした性被害に遭った子どものためのカウンセリングプログラム、実際にプログラムを受けた
子どもたちにどのような変化が見られるか、こちらです。
実際にプログラムを受けた子どもが書いたことばで、「プログラムをうけたらげんきになったよ。これからうけるこもがんばってね」と書かれています。臨床心理士の新井さんも、子どもたちから「『すっきりした』、『思い出してももう怖くないよ』と話してくれる子が多い」と話していました。
一方でもし、身近な人から性被害を打ち明けられた場合に気を付けてほしい言葉があるということです。
◆「忘れた方がいいよ」
◆事件から時間が経っている場合
 「まだ悩んでいたの?」
◆別の事件と比較して、
「あなたの方がましじゃない?」といった言葉です。
新井さんは、あくまで被害者のためを思ってかけた言葉が、さらに被害者を傷つけてしまう可能性があるということです。
―ではどういった言葉をかけるのがよいのでしょうか?
それがこちらです。
◆大変だったね。何かできることはない?
新井さんは、できる範囲で構わないので、何かできることがないか、聞くだけでも被害者を励ますことになるということでした。
お伝えした被害者支援都民センターでは電話での相談を受け付けています。こちらの番号です。性被害に限らず、様々な犯罪の被害に遭われた方、また交通事故に遭われた方、力になってくれる人がいますので、ぜひ1人で抱え込まず相談してみてください。

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