<戦後80年>30代の「伝承者」語り継ぐ東京大空襲 国立市、経験者から聞き取り思いを代弁
地域・まち - 2025年8月15日 22時30分
1945年3月10日の一晩でおよそ10万人の命を奪ったとされる「東京大空襲」について、80年の月日を経て記憶の風化が課題となる中、東京・国立市で8月15日、空襲の経験者から聞いた話を語り継ぐ「伝承者」による講話が行われました。
「伝承者」の1人、佐藤稀子さん(35)は「一晩で約10万人もの人々が亡くなった。10万人というとピンとこないかもしれないが国立市の人口が約7万6000人なので、一晩でこの国立市に住んでいる人全員の命が失われ、それよりももっとたくさんの命が奪われたことになる」と説明しました。
国立市では戦争の記憶を映像や文字だけでなく言葉で語り継ぐ取り組みを進めていて、戦争の経験者から話を聞いた30代から80代までの合わせて21人が「伝承者」として活動しています。
佐藤さんがこの日語ったのは、8歳の時に江東区亀戸で東京大空襲に遭い、家族とはぐれて炎の中を逃げ惑った二瓶治代さんの経験談です。
「お父さんから手を離した途端、炎の風にハー坊(二瓶さんのあだ名)1人が吹き飛ばされ、家族とはぐれてしまいました。熱かったとか怖かったとか苦しかったとか、人間らしい記憶は1つもありません」「前日の夕方まで学校ごっこや戦争ごっこをして遊んでいた大切なお友達です。夕方、お母さんの『ご飯だよ』の声に『またあしたね』と約束して別れたお友達でした。こうして3月10日はハー坊の周りでたくさんの人が亡くなっていきました」と、家族の命は助かったものの一晩にして多くの友人が犠牲になったという二瓶さんの喪失感を佐藤さんが代弁しました。