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企業も災害に備えを 事業継続計画『BCP』─「社員と事業を守る仕組み」

ビジネス - 2025年9月4日 19時00分
過去に大きな地震や台風などが襲った9月を迎え、TOKYO MXは今週「防災ウイーク」として防災情報をお伝えしています。今回は、災害に備えた「BCP」=“事業継続計画”策定に取り組む東京・江東区の企業を取材しました。

江東区に本社を置く創業94年の細田木材工業は、社員数40人ほどの、火災や腐食に強い木材を製造・販売している会社です。奥村永徳社長は「社員と事業を守る仕組みが必要だと強く感じていた」といいます。

この会社では東日本大震災が起きた際、敷地内の液状化や社員の多くが帰宅困難になった経験から、2021年に10カ月ほどをかけてBCP(事業継続計画)を策定しました。

BCPは企業が自然災害などの緊急事態に被害を最小限に抑えつつ、事業の継続や早期復旧を行うための計画です。この会社では首都直下地震や高潮などを想定し、社員の避難や被害の確認、事業復旧を迅速に進められるよう誰が工場を稼働させるかといったことや、誰が取引先と連絡を取るのかなど、役割を細かく定めています。

奥村社長は「ここに食料と水。BCPの備蓄一覧にのっとった数が置いてある」と備蓄棚も紹介し「一番のメリットは社員が安心できること。仮に災害が起きても各人が自身の役割に沿って行動することで、戸惑うことなく落ち着いて行動できる。中小企業でも規模に合ったBCPを作ることで、社員とお客さまの安心につながる」と話します。

企業にとって重要となるBCPですが、東京商工会議所によりますと、都内の中小企業の策定率は3割未満にとどまっています。この会社でも毎年、訓練や計画の見直しを行っているものの、人手不足や業務に追われるなどの理由で、2年前に稼働した工場についてはまだBCPの策定ができていないといいます。奥村社長は「社員のBCPに対する意識を高めるために十分な時間が取れず、説明できていない」としつつも「災害が起きないことを願いつつ、今後も継続して強化していきたい」と話しています。

<「BCP」策定…中小企業は3割未満 能登半島地震では6割に被害も>

2024年1月に発生した能登半島地震では、実際に被災エリアの企業に大きな影響がありました。

内閣府が同年7月から8月にかけて行った調査では、社屋や工場に直接被害があった企業や、取引先の被害による影響を受けた企業を合わせると、全体の6割ほどに及びました。そのうち11.7%の企業は「営業を停止した」と答えていて、中には1億円以上の被害を受けた企業もあったということです。

しかし東京商工会議所の調査では、災害時にも企業が営業を続けるために重要な「BCP」(事業継続計画)の策定率は東京都内の企業全体で39.5%にとどまっています。大企業では63.0%に達していますが、中小企業では28.0%で、3割未満なのが現状です。策定の課題としては「人員/時間の余裕がない」と答えた企業が半数以上に上り、「具体的な対策の方法が分からない」「費用に余裕がない」という回答も多く見られました。

こうした状況について、東京商工会議所の担当者は「中小企業は被害があれば事業が立ち行かなくなる恐れもある。自社だけでなく、サプライチェーン(企業の供給網)を維持するためにも策定を検討してほしい」と話しています。

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