脱毛大手ミュゼプラチナム 会社は“解散”…元従業員や利用者の不安続く
ビジネス - 2025年7月9日 19時00分
4月に報道した脱毛大手「ミュゼプラチナム」の経営トラブルの続報です。ミュゼプラチナムの運営会社を巡っては、6月に突然会社の解散が発表されました。従業員や利用客の不安は今も続いています。
全国に169店舗を展開し、合わせて430万人の顧客を抱えていた脱毛大手が今年3月、従業員や顧客への事前の説明がないまま、突然休業を発表しました。そして、その後明らかになったのは、半年にわたる給与の未払いなどずさんな経営の実態でした。4月、従業員(当時)はTOKYO MXの取材に対し「給料日当日に『申し訳ございません』と連絡が来て、何日までに残り(の給料)を入れますと連絡があっても、その期日になって『やっぱり全額無理でした』という状況」と証言しました。元従業員の思いを運営会社・MPHの高橋英樹社長に伝えると、4月当時「未払い金を5月中に確定させて、年内には未払い金の支払いを全て完了させる予定」と話していました。
しかし、高橋社長は6月6日「6月2日付で株主総会の決議により、会社を解散することにした」と述べ、再び従業員への事前説明がないまま、資金不足を主な理由とする事業停止=「解散」を発表しました。
<“解散”に専門家「前途多難」>
解散に向けた今後の方針について、高橋社長は従業員に対しては「未払い賃金を払えるだけの資本が残っていない」と話し、失業手当や未払い賃金の8割を国が立て替える制度を利用できるよう支援していく、顧客に対しては「契約中でまだ実施されていない施術は、従来の店舗と同じ質のサービスを提供する個人サロンの『フランチャイズ店』で受けられるようにするため、現状、返金は考えていない」と説明しました。また、この事業を継続するためには、破産ではなく、脱毛事業を別会社に移した上で解散する必要があると会見で説明しました。
これについて、労働問題に詳しい正畠大正弁護士は「債権者の合意がないと財産の分配を始められず、今回の債権者は1000人に上るとみられるため、清算は前途多難ではないか」とみています。
<会社“解散”に元従業員は怒り「謝罪ない」>
この状況について、前回取材した元従業員に改めて思いを聞きました。
元従業員・Aさんは「解決させようという気を感じられない。会見も聞いていたが、従業員に対する謝罪もなかったと思うし、お客さまに対する謝罪も私はなかったと思っている」と憤りました。3月の突然の“解雇”を受け、これまで日雇いのアルバイトで生計を立ててきたというAさんは、今回も従業員への具体的な対応が示されなかったことに怒りをあらわにしました。Aさんは「(会見は)自分たちは悪くないという言い訳をつらつら聞かされていただけという感じ。欲しい情報、聞きたいことは相変わらず聞けない時間だった」と、会見の内容についても厳しい評価でした。
また、別の元従業員・Bさんはこれまでの対応が不誠実だったとして、今回も何かあるのではと不信感が拭えないと話します。Bさんは「『倒産』でなく『解散』という言葉の言い回しの裏には何があるのか。結局私たちがどうなるのかということが明確になく(解散については)1週間後ぐらいに書面で送られてきたが、内容は会見そのままなので、それだったらすぐ出せたのではと思った」といぶかしがります。
他にも元従業員からは、事前の説明なしで解散が発表されたことや、給与の支払いに向けた言及がなかったことなどを受け「一人一人に生活があることを何一つくみ取ってもらえていない」といった声もありました。
では、現状に対して従業員ができることはあるのでしょうか。正畠弁護士は「会社の解散の完了を待たなくても国の未払い賃金立て替え制度は利用できるため、労働基準監督署などで相談してほしい」としています。
一方、現在も脱毛施術の契約が続いている顧客の女性にも話を聞きました。この女性は現在は銀行に事情を話して引き落としを止めてもらっているということですが、手続きなど今後の情報が全くないため、会社側には十分な説明をしてほしいと話します。また、会社が提案している「フランチャイズ店での施術継続」については、信頼している今までのスタッフでないと施術を受けるのは怖いためフランチャイズ店での利用はひとまず控えたいと話しています。
こういった顧客の声に対し、正畠弁護士は「契約を解除する権利の行使には期限があるため、解約したいのであればできるだけ早く消費者センターや弁護士など専門家に相談をしてほしい」と呼びかけています。
<元社長がインタビューに応じる「最善は何か考え動いた」>
こうした元従業員や利用者の声について、元社長はどう考えているのでしょうか。ミュゼを運営するMPHの元社長・高橋英樹氏はTOKYO MXの取材に再び応じ、従業員に国の未払い賃金立て替え制度を利用してもらうよう手続きを進めていると説明しました。
高橋元社長は「(従業員)一人一人の生活を守るために最善は何かということを考えて動いていたつもり」とした上で「労働基準局に必要な書類は全ての提出が終わっている状態で、労働基準局の判断待ちの状態」と説明しました。また、一部の顧客から上がっている契約解消を求める声について高橋元社長は「お客さまの解約に関しては一般債権になるので、私たちではもうタッチができない。信販会社とやりとりしてもらい、私たちは別会社で契約した分の施術を行っていく」としました。
「今後も債権者と対話を続け、誠心誠意やれることを行いたい」と説明した高橋氏に、今後のミュゼプラチナムの運営について尋ねると「商標をしっかり守っていく。ミュゼプラチナムの歴史に恥じない運営を今後もしていきたい。海外でミュゼプラチナムブランドを使っていきたいと考えているので、今後は(海外を)伸ばしていきたい」と話しました。