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デジタル社会の“代償”をアートで問題提起 データセンターで揺れる東京・日野市の学生

文化 - 2026年3月5日 21時00分
慶応大学大学院生の永田一樹さん(24)は政策・メディア研究科に所属し、文化庁が創作活動の支援をする今年度の「メディア芸術クリエイター育成支援事業」にも選ばれたアーティストです。永田さんは自身の出身地である東京・日野市内でデータセンターの建設計画が進む中、事業者と住民側の間で問題が起きているのをきっかけに、巨大インフラ整備の裏で何が起こっているのかアート表現を通して社会に訴えています。『デジタル社会の“代償”を学生がアート作品で問題提起』している永田さんの作品への思いと表現を、TOKYO MX『堀潤 Live Junction』キャスターでジャーナリストの堀潤が取材しました。ぜひ動画と併せてお読みください。

今回訪問した白を基調とした空間には幾つかの電子機器が並び、それぞれに永田さんのメッセージが込められています。永田さんは「今回3作品を出していて、インスタレーションと呼ばれるもの。空間全体として表現をしつつ、それぞれ3パートに分かれて展示している」と紹介しました。

1つ目の作品は「リアルタイムでChatGPTを動かしている」という『タブレットを使った作品』です。大きなタブレットに表示されているのは生成AIの画面で、縦型のモニターには定期的に水が落ちてきています。これについて永田さんは「入力欄に『thanks』という言葉をずっと打ち続けている。その言葉が送信されてChatGPTが返答するたびに その背後のデータセンターなどで消費されている水と推定される量の水をディスプレーの上に落とし続けている作品」と解説しました。堀潤は「なるほど。私たちが気軽にAIを使っているその先に、サーバーを冷やす水が使われているということが表現されているんですね」と感心しました。

データセンターを冷却するために水の使用量は増加する見込みで、2028年までに最大で4倍になるという試算もあります。永田さんは「AIを使う人は今、すごく多いと思うが、その背後では実は大きな環境負荷やエネルギーの消費が起こっている。こうして可視化されると一気にリアリティーが出ると思う」と話しました。

2つ目の展示は『ゲーム作品』です。

堀が「このCGは見覚えがありますよ」と話すと、永田さんは「日野市民の大谷昭夫さんに頂いたデータを使って制作しました」と明かしました。番組はデータセンター建設地の周辺に住む大谷さんを2025年4月に取材していて、大谷さんは“データセンターが実際に建設されると、街の景色はどう変わるのか”について3Dソフトを使って映像や模型を作成し分析していました。今回、永田さんはその3Dデータでゲーム作品を作ったといいます。

堀が画面を見つめ「次々と文字が降ってきますけど、これは何ですか」と尋ねると、永田さんは「インターネットの匿名掲示板に日野市データセンタースレッドが3つぐらいあり、そのうち1つのスレッドのコメントを順番に表示をさせている。この世界をテキストが埋め尽くしていって、だんだん身動きが取れなくなっていくような設計をしている」と説明しました。堀が「どうして文字によって阻まれることになるんですか」と聞くと、永田さんは「日野市のデータセンターを巡るいろいろな人たちの言説や運動を、空間としてマッピング(配置)させたいというのがあった。そこを『どうしたらいいんだろう』と悩んで立ち尽くすような感覚を、このゲームを通して共有できたらなと思って制作した」と話してくれました。堀は「こういう表現の仕方があるんですね。報道ではなかなか体感・体験までは提供できないから、すごく感激しています」と感想を述べました。

そして3つ目の作品は『ビデオエッセー』です。永田さんの地元であり巨大データセンターが建設される日野市を舞台に、普段は学生としてAIなどの「便利さの恩恵を受ける自分」と「巨大施設の建設で揺れる地元にいる自分」という2つの感情で揺れ動く自分を表現しています。

永田さんはこれらの作品を通してAIやテクノロジーの便利さが「本当に私たちの役に立っているのか?」という根本的な問いを訴えたいといいます。永田さんは「アートはそういう根本のところに立ち返るための方法でもあると思う。どのように役に立つのか、考え直す機会になれば本当にうれしい」と話しています。

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