世界が認める日本の「靴磨き」技術とは【TOKYO LENS】
文化 - 2025年11月13日 21時30分
外国人記者の視点で日本の魅力や課題をお伝えするTOKYO LENSです。
取材したのは中国出身で中国語・日本語・英語を話す報道部の曹蒙記者です。
訪れたのは、港区にある靴磨きの専門店。この店では、カウンター越しに客の目の前で靴を磨いてもらえます。一足にかける時間はおよそ1時間。じっくりと靴をきれいにしていきます。職人に靴磨きのこだわりを聞くと…
職人:「これを僕らは素手で取って塗り込んでいきます」
曹:「素手なんですね、タオルとかではなくて」
職人:「僕ら職人は革の状態を長年の経験で見極めているので、直接指で触ることで革のコンディションを確かめながら磨いている」
さらに、体温でクリームを温めながら塗り込むことで革に浸透しやすくなるのだといいます。靴磨きに様々なこだわりを持つ職人の新井田さんは、今年ロンドンで行われた世界大会で優勝しました。
新井田さんは靴磨きが日本人の気質に合っていると話します。
新井田さん:「日本人の元々持っている気質はすごいある。細部にまで気を配って仕事しようとなるのが日本人らしさで、それが靴磨きという仕事と相性が良くて」
また、新井田さんは靴磨きは見ているだけで「心が整う」ことがあるといいます。
新井田さん:「靴を眺めながらきれいになっていって一時間過ごすと、整っているんですよ心が」
「自分の普段はいている靴の魅力をより感じて靴を好きになってもらえたりしたらすごくうれしい」
時間をかけ丁寧に磨かれた靴の出来栄えに曹記者は…
曹:「つやがたくさん出てますね。こんなに生まれ変わるとは思ってなかったです」
今や世界に誇る日本の「文化」として確立しつつある靴磨き。その歴史は路上から始まりました。日本の靴磨きの歴史は第二次世界大戦後に遡り、路上生活を余儀なくされた少年たちが生きるために始めたといわれています。それからおよそ80年。その技術を現代につなぐ路上の靴磨き職人・パブロ賢次さん。東京駅前などで50年以上靴を磨き続けています。
パブロさん:「この丸の内北口からほとんど移動してないです。古い人は50年とか、たまに来て賢ちゃん賢ちゃんって」
今でも多い時で一日20足もの靴を磨くといいます。
客:「通りかかって懐かしいという思いの中やってもらいましたね。買った時よりきれいですもんね」
しかし現在、路上営業への規制は厳しくなっていて、今では路上の靴磨きは都内に片手で数えるほどしかいないといいます。それでもパブロさんの靴磨きを求めて遠方から訪れる客も少なくありません。
愛知からの客:「名人だと思います。一回やってもらうと数カ月磨かずにもつ。そのくらいいつまでも輝いている」
愛知に住むこちらの男性は東京へ出張に来る際にしばしばここへ立ち寄るのだといいます。
客:「別の靴になったね、これはすごい!」
東京、そして日本の人々の足元を支えてきた職人は、体力が許す限りこの仕事を続けたいと話します。
パブロさん:「靴磨きが好きだから。基本的にみんな感動して帰る。(靴が)見違えるようになるでしょ。巨匠になってもやります、靴磨きを」
(2025年10月22日「Wake Up 7」より)