観光客年間20万人の伊豆大島 巨大津波の対策は/Tsunami Countermeasures on Izu Oshima Island

(地域・まち - 2024年08月09日 20時00分)

南海トラフ地震によって津波の被害が想定されている島しょ部の対策について、年間20万人が訪れる観光地、東京・伊豆大島の津波対策を取材しました。 東京都心からおよそ120キロに位置する、伊豆諸島の中で最も大きい伊豆大島では8月9日、防災無線で「今後の大きな地震に備え避難場所、非常持ち出し品の再確認をお願いします」と、南海トラフ地震への警戒が呼びかけられていました。東京都の被害想定では南海トラフ地震が発生した場合、伊豆大島には地震発生からおよそ23分後に最大およそ16メートルの津波が押し寄せると予想しています。町民からは「(津波の心配は)海沿いだとずっと標高がないので怖い。食料の買いだめはしていない」「ある程度、町で食料の備蓄をしているので、そういうもので最低でも3日分ぐらいはあると思う。町も一生懸命やってくれているので、大丈夫かなと思う」などといった声も聞かれました。 津波に備え、島ではさまざまな対策が進められています。甚大な被害を防ぐため、大島町は2019年に「津波避難マップ」を作成しました。予想される津波の高さに対応した避難目標ラインを設定し、避難するための最適なルートを示しています。この地図は町の公共施設に設置するとともに、全ての住民に配られています。大島町・防災対策室の柳瀬塁係長は「大島ではだいたい30メートルぐらいを避難の目標にしているので、それより高くに行かないと命は守れないよと示している。万が一、大津波警報など出た場合は何も持たず、すぐ高台に行ってもらうというのが大前提」と話します。 また、津波に対応するための施設の整備も進められています。岡田港では南海トラフ巨大地震を想定して造られた避難施設があります。5年前=2019年に完成した船の待合所は避難施設としての機能を備えていて、高さ12メートルの屋上に1600人が避難できるということです。島全体で津波への警戒を続ける大島町で、住民たちの中には「避難経路とかどこに避難所があるのかとか、そういうのは確認している」「(電器店を経営しているので)停電になったりした時に対応できるようにしている。前(2013年)に土砂崩れがあった時は大変な思いをしているからね。町から支給されたものも少しあるから」と話す人もいました。 大島町は今回の南海トラフ地震臨時情報を受け、島内の避難所の状況を確認するとともに、警戒の段階が引き上げられた際に事前避難ができるよう、検討していく方針です。ただ、対策を進める一方で、坂上町長は大島特有の課題を懸念しています。町長は「観光客の皆さんがこの時期、いっぱいいらっしゃるので、どこに逃げたらいいか分からないというのも多々あると思う。島ならではの防災対策、すぐ上に逃げてもらうようなことをポスターとして配ったり、これからもっと周知していかなければならない」と話します。伊豆大島は年間20万人ほどが訪れる観光地であることから、町では観光施設に対して「津波避難マップ」を掲示して、島外の人に避難経路などを説明するよう呼びかけています。また今後、町で保管している水や食料などの備蓄品を拡充していくなど、津波への備えを強化していく方針です。 <島しょ部の津波対策 課題は?> 大島町の坂上町長は「観光客の対策」のほかに、高齢者への対応も課題だと懸念しています。大島町は島民のうち高齢者の割合が4割ほどとなっていて、緊急時の避難時の移動などが懸念されています。そのため、町長は住民同士のネットワークを駆使して、助け合える体制を行政として支援していきたいと話していました。 今回取材をした記者は、島内の「備蓄の重要性」を感じたようです。大島では食料品などが船の定期便で送られてくるため、自然災害で船が往来できなくなると、生鮮食品などを受け取ることができません。そのためか、普段から非常時に備えて食料品などを備蓄する人が多い印象です。また、大島町では10年前に住民が犠牲となる大規模な土砂災害もあり、台風の接近も多いことから、日頃から住民の防災意識は高いようです。行政だけでなく住民同士の助け合い、そして日頃からの備えの2つが重要といえそうです。

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