「TKB48」で解決を! 30年たっても変わらない日本の“災害時の避難所”

(地域・まち - 2025年10月14日 21時00分)

災害大国である日本で「災害時における避難所の在り方」は長年の課題となっています。1995年に発生した阪神大震災と2024年の能登半島地震の避難所の写真を比較してみると、30年近くの時がたっているにもかかわらず、体育館などの広いスペースに多くの人が集まり、プライバシーの確保が難しい「雑魚寝」の状態はほとんど変わっていません。このような状況を打開するための新たな指針として「TKB48」という考え方の提言があります。これは、T(トイレなどの衛生面)、K(キッチンなどの食事面)、B(ベッドなどのパーソナルスペース)を、災害発生から48時間以内に避難所へ整備することを目指す取り組みです。この指針が実現することで、避難者の生活がどう変わるのか取材しました。 <避難所生活を過ごしやすく「TKB48」とは> 首都直下地震が起きた直後の様子を体験できる東京・江東区の防災体験学習施設「そなエリア東京」には、避難所で過ごした人たちの声をまとめたパネルが展示されています。パネルには「温かいスープを食べて、すこし気分がほっとした」という声がある一方で「授乳スペースがないし、人も多いし困った」といった不満も掲示されています。また、避難所を再現したイラストには、仕切られたスペースがなく人がすし詰め状態になっている様子も描かれています。 なぜ避難所での生活は改善されないのでしょうか。避難所・避難生活学会の水谷嘉浩代表理事は「災害のたびに同じような避難所が作られるのに、毎回ニーズ調査をする。ニーズ調査で分かってから必要なものを送るため、2、3週間また(届くのが)延びてしまう。さみだれ式、いわゆる逐次投入をやっているから、いつまでたっても我慢が続く」と分析し、必要なものを確認するニーズの調査に問題があると指摘します。また能登半島地震では避難所の状況が共有されず、全国からおよそ13種類もの段ボールベッドが届き、作り方が違うことなどから混乱を招いたといいます。 水谷さんは海外の事例を学ぶべきだとして、2012年にイタリアで地震が起きた際、避難所では「TKB48」が機能していたと指摘します。水谷さんは当時を振り返り「とにかく生活環境が素晴らしい。完璧にできていた。特に住環境、食事、トイレやシャワーという衛生関係も、医療も、日本とあまりにも違うととにかく驚いた。生活空間を48時間以内に整えるということをイタリアはやっているので、それを日本にも広めたいと『TKB48』という言葉を考えた」と説明しました。 <48時間以内に整えるイタリアの避難所 備蓄基地と支援者派遣で迅速対応> イタリアでは2012年の地震の際にも「TKB48」の考え方が機能し、住環境、食事、トイレ、シャワー、医療といった生活空間が48時間以内に整えられました。これは1980年にイタリア南部で発生したイルピニア地震で、自治体などの連携不足が原因で救護活動が遅れた教訓から、国主導で「市民保護局」を設置した成果です。これにより「備蓄基地の設置」と「支援者の派遣」の整備が進みました。イタリアでは国内100カ所以上に備蓄基地を設け、250人分・500セットの物資を事前に備蓄しています。このため、万が一の災害時には、避難所に備蓄品が迅速に一括で送られます。また1つの避難所には料理人や技術者など約50人の支援者を派遣して、暮らしをサポートする態勢が取られるということです。 <避難所への物資を迅速に 「TKB48」実現へ実証実験> 日本でも「TKB48」の実現を目指す動きが始まっています。 大手建設会社から生まれたスタートアップ企業「シェルターワン」は、避難所での災害関連死を減らすために設立された企業で、災害時に向けた資材倉庫の整備・管理のほか、避難所を運営するリーダーの育成に取り組んでいます。児島功社長は「体育館での雑魚寝が被災者に与える不安や絶望は大きい」と語ります。 今年3月には長野県で日本で初めてとなるイタリア式の避難所設営「TKB48」の実証実験を行いました。実証実験では長野県内を震源とした地震を想定し、支援物資の輸送や避難所の設置にどれだけ時間がかかるかを検証しました。 避難所からおよそ40キロ離れた伊那市の備蓄基地からあらかじめ保管されていた発電設備やベッドなどをまとめて送ることで素早い物資の調達と輸送ができ、地震発生から5時間後には避難所に物資が届きました。さらに避難所では派遣された専門業者の“支援者”らがテントやシャワーなどを次々と組み立て、12時間後には生活環境が整った避難所が完成し、食事を支援するスタッフが温かい食事を調理して提供したほか、子どもたちをケアする支援チームもスムーズに立ち上げられました。 児島社長は「生活に必要な資機材はある程度決まっていると思うが、それを一式で持ってくることに意味がある。それをわれわれはユニット化と言っている。トイレだけ欠けても駄目だしシャワーだけ欠けても駄目。生活に必要なものが一式そろって初めて被災者の生活が担保される」と力説します。 この会社では将来、日本国内に約200カ所の備蓄基地を整備する計画を進めています。 <最新の防災サービスも「そのとき、どうする?展」> 最新の防災設備やサービスも進化しています。東京・港区で11月3日まで開催中の『そのとき、どうする?展』では、避難所での生活を快適にするための最新の防災設備が展示されています。紙の筒に布をかけることで、即席のパーソナルスペースを作ることができる「避難所用・紙の間仕切りシステム」や、排水を循環させて利用できるシャワー「WOTA BOX」などを展示しています。 中でもユニークなのが、日本郵便と寺田倉庫が手がける「防災ゆうストレージ」(1カ月275円~)というサービスです。これは必要な薬や思い出の品など、自分にとって不可欠なものを事前に預けておき、災害時にインターネットで「取り出し依頼」を行うことで、全国の避難先へ届けてもらえるというものです。こうしたサービスは日常と災害時の生活の乖離(かいり)を少なくし、身体的・精神的な安心感につながることが期待されます。

https://s.mxtv.jp/mxnews/amp/mxnews_46513120.html

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