都心に働きに…多摩地域特有の「朝の小1の壁」 三鷹市と調布市の取り組み

(福祉・教育 - 2025年10月20日 22時00分)

小学校に入学すると、登校時間がそれ以前の“保育の預かり開始時間”に比べて遅くなり、児童が朝1人きりで過ごさなければならない状況が生まれてしまいます。そのため、子どもの安全な居場所の確保が問題となります。これがいわゆる「朝の小1の壁」といわれるものです。特に東京・多摩地域は、東京都心に通勤する保護者が多いため、自宅の出発時間が早いのも特徴の一つです。例えば保護者の職場が新宿の場合、多摩地域の青梅駅からは通勤に1時間近くかかるなど、東京都心で暮らす人よりも子どもの預け先や働き方の変更を迫られる「小1の壁」は深刻です。多摩地域の自治体は共働き世帯などの子育てを支援する目的で、児童が朝の時間を学校内で過ごせる「見守り」の取り組みを進めています。三鷹市と調布市の事例を取材しました。 <三鷹市 登校時間前に小学校の校庭を開放> 三鷹市で3人の子どもを育てる宮崎さん一家も「朝の小1の壁」問題に直面する共働き世帯です。夫の健史さん(45)は会社員で、足立区の勤務先まで時間がかかるため、毎朝5時には自宅を出発します。妻のみかさん(43)も生花店でパート勤務をしていて、シフトによっては子どもたちの登校時間より前に出勤することがあり「大人がいないと対処できないことがあったら、子どもはすごく不安だと思う」と、子どもだけを自宅に残すことに不安があると話します。 こうした声を受け、三鷹市では2023年11月からシルバー人材センターと連携し、市立小学校15校で登校より前の時間=平日午前7時半から午前8時15分まで、校庭の開放を始めました。校庭では児童たちがダンスの練習をしたりサッカーで元気に走り回ったりするなど、思い思いに朝の時間を過ごしています。宮崎さんの息子・篤人くん(11)も「学校の始業時刻前に遊べるのは楽しい」と話していました。三鷹市・教育部の寺田真理子調整担当部長は「この地域は両親が都心に勤めに行く家庭が多い。そうすると、子どもが一番最後に家の鍵を閉めて出なければいけない。三鷹市のような取り組みが近隣の市にも広がっていくといい」と話しています。 宮崎家では朝の校庭開放が始まる前までは、みかさんが勤務時間を調整して子どもたちが登校してから働きに出ていましたが、今ではシフト調整も容易となり、勤務時間を増やすなど働きやすくもなったということです。みかさんは「働く母親にとって子どもを1人で家に置いていくのはできればしたくないこと。子どもにとっても朝早くから体を動かして遊ぶのもすごくいいことだ思うので、この取り組みがなくならず、このままずっと続いてほしい」と話しています。 <調布市 教員負担なし“見守り”が職業体験にも> 多摩地域では、調布市も「朝の見守り」活動を行っています。子どもだけでなく、教員などの大人にとってもメリットがある取り組みが進められています。 調布市では教員の勤務開始時間よりも45分早い午前7時半から「朝の見守り」が行われています。教員に負担をかけないよう、調布市に住む大学生や地域の人たちで見守りが行われ、入り口も分けられています。見守り専用の入り口にすることで子どもたちへの目配りをしやすくし、大人の目が届かない場所でのトラブルを防ぐことも目的です。 子どもたちと交流する見守り員は現在104人で、そのうち大学生を含む10代と20代が全体の3割ほどを占めています。市の教育委員会は「見守り」を、将来教員を志望する学生の職業体験としても位置付けていて、若手の起用を積極的に行っています。見守り員を務める20代の大学生は「年齢が近い方が話しやすいという子もいたりする。年齢が近いことで、自分には何かを伝えやすかったりとかするのかなと思う」「先生などの、子どもと触れ合う仕事にもぜひ就いてみたいと思っている。今のうちから子どもたちと多く触れ合っていきたいと思っている」などと話していました。 <保護者の満足度は9割超 一方で予算に課題も> 調布市が今年6月に保護者を対象に行ったアンケート調査では、朝の見守りに満足する保護者の割合は93.8%に上りました。保護者からは「子どもの登校時間に合わせて出勤していたが、気持ちにゆとりを持って仕事に向き合えるようになった」「母子家庭なのでとても助かる。継続してほしい」「毎朝泣きながら登校するので教室まで連れていくため、仕事に遅刻していた。大人への引き渡せるので子どもも安心し、泣かずに離れることができる」といった声もあり、登校をためらっていた児童にとってもかけがえのない居場所になっているようです。 しかし、これらの取り組みを支える予算は十分ではありません。調布市の今年度の予算は3440万円で、そのうち約3割が東京都からの補助金で賄われる予定です。調布市教育委員会の鈴木課長は、今後全ての市立小学校に取り組みを広げていくためにも、国や都の補助制度の拡充に期待したいと話します。一方、三鷹市の予算は1789万円です。三鷹市は「校庭を開放する」という取り組みのため、雨天時などに体育館を開放したいという思いはありますが、校門から入ってくる児童の見守りを同時に行う必要があり、予算上の配置が困難だとしています。

https://s.mxtv.jp/mxnews/amp/mxnews_46513120.html

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