“1票の重み” 落選候補の申し立てで 中野区議選 最下位当選者の当選無効
選挙の「一票の重み」が浮き彫りとなりました。東京都選挙管理委員会はきょう(9日)、今年4月に行われた中野区の区議会議員選挙について僅差で落選した候補の申し立てを認め、最下位当選した区議の当選を無効にすると裁決しました。 申立者:「まずはちょっとほっとしたというところでしょうか」「今回に関しましては2000票もの無効票がある中で」「ちゃんと民意が伝わっているのかなというところを」「きちんとはっきりさせていきたいなという思いもありまして(申し立てした)」 きょう(9日)このように答えたのは、今回異議申し立てを行っていた田中裕史さんです。今年4月に行われた中野区議会議員選挙では、落選した田中さんと最下位で当選した井佐哲郎さんとの票数の差が「0.415票」と僅差でした。田中さんはほかにも自身と同じ名字や名前の候補がいたことなどから票の数え間違いを主張し、異議を申し立てました。中野区の選挙管理委員会はこの申し立てを棄却しましたが東京都の選挙管理委員会は申し出を受け先月初め投票用紙の点検を行いました。 きょう(9日)行われた都選管の「申し立てに対する裁決」…井佐さんの有効票とされていた一票を無効とし田中さんの当選を取り消しにすると結論づけました。区と都で判断が分かれたのは「いさしんいち」と書かれた投票用紙です中野区の選管はこの記名について… 「名字が井佐哲郎候補と同一であり類似する名前の候補者は他にいない。〈てつろう〉と〈しんいち〉は共に4つの文字と音で類似しており、記憶違い又は誤った記入と推察できる」 一方、都の選管は…「〈しんいち〉を名とする候補者はいないが、井佐候補の名の哲郎とは全く類似性がなく、その名を誤記としたものとは認めがたい」 都選管によりますと30日以内に高裁への提訴がなければ裁決が確定し当選者が入れ替わるということです。 ///// 4月の中野区議選の結果が覆った経緯と今後について見ていきます。 定数42に対して、60人が立候補した4月の中野区議会議員選挙。42位で当選した、井佐哲郎さんの得票数は、1585票でした。対して、次点の43位で落選した、田中裕史さんの得票数は、1584.585票で、 その差は、1票より少ない、0.415票でした。なぜ小数点以下の数字になっているかというと、「案分票」と呼ばれるもので、投票用紙に苗字や名前だけが書かれている場合、候補者の中に、同じ苗字や同じ名前の人がいる場合は、得票数に応じてそれぞれの候補者に振り分けることになっているためです。 今回の場合、田中裕史さん以外に、「田中」さんと「ひろし」さんが、それぞれ1人ずつ、立候補していました。こうしたことから、43位で落選した田中さんは、票の数え間違いがあった可能性があると主張し、異議を申し立てました。5月に中野区に異議を申し出ましたが、これは棄却となります。その後、今度は、都の選管に異議を申し立て、きょう(9日)都選管が、42位で当選した井佐さんの当選を無効にすると裁決しました。無効にした理由について、都選管は、票を点検した結果、井佐さんへの投票の中に、無効票が1票あったためとしています。 Q:同姓や同名の案分票の方ではないということですよね? そうなんです。案分票に問題はなく、井佐さんへの投票に無効票があったということで、井佐さんの得票数が、1票減り、1584票になることから、田中さんより0.415票少ないため、井佐さんの当選は無効になるとしたんです。その無効票となった票は、「いさ・しんいち」と書かれたもので、苗字は一緒ですが、名前はまったく異なるものです。中野区の選管は、これを有効票と判断していたんですが、理由としては、「しんいち」という名前は、立候補者の中にはおらず、類似する人もいない事に加え、文字数と音で類似していたため、井佐さんへの投票と判断したということです。これに対し都選管は、過去の最高裁の判例などに基づき、全く類似性がないとして、無効票と判断したということです。 今後の流れですが、今回の裁決に不服がある場合は、30日以内に東京高裁に提訴することが可能で、仮に訴訟となった場合は、判決が確定するまで、井佐さんは中野区議でいられるということです。提訴しない場合は、今回の裁決が確定することになります。今回の裁決について、井佐さんは自身のSNSで、東京高裁に提訴する意向を表明しています。
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