奨学金新制度「返済不要」「出世払い」どう思う? Z世代が画期的提言

2022.05.31(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」では、Z世代の論客が“奨学金新制度”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」では、Z世代の論客が“奨学金新制度”について議論しました。

◆返済不要の給付型奨学金の拡充、さらには出世払い型も

日本の教育費は世界の中でも家庭の負担が大きいとされていますが、人への投資の強化を図る政府は、大学などの高等教育について返済不要の「給付型の奨学金」の拡充や、「出世払い型奨学金」の導入などの提言を行いました。

「給付型の奨学金」は現在、年収380万円未満の世帯が対象となっていますが、検討案では600万円まで引き上げ、子ども3人以上、学費が高くなるとされている理工農系の学生までの拡充を想定。

また「出世払い型奨学金」については、授業料を国が立て替え、卒業後300万円以上など一定の年収を得られるようになってから返済を開始するとしています。

こうした検討案について、教育社会学者で立教大学の中澤渉教授は、前者は一部しか享受できない不公平感があり、後者は返済の年収設定による不平等感があるのではないかと指摘しています。

出世払い型奨学金に対し、株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さんは「そもそも(年収)300万円は出世しているのか?」と違和感を唱えます。

年収300万円となると手取りは月20万円程度で「奨学金の返済は平均月に2万5,000円ぐらいなので、手取りの1割以上を返している状態」と言い、「東京で家賃の問題などを考えると、多分無理。現実的に返せるプランじゃない」と危惧。「出世払いという考え自体はいいと思うが、もう少し金額要件を上げていかないと大変」と不安視します。

一方、国内外の遺児を支援している「あしなが育英会」の職員でもあるアフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんは、「国が立て替えるというところに(奨学金を)借りた学生の返済モチベーションがどれぐらい湧くのかも(ポイントの)ひとつ」と言い、自身のアイデアとして奨学金を国ではなく、大学が貸し出すことを提案

なぜなら、「そのほうが、大学が学生に良いサービスを提供しようとするし、学生も大学をより良くしていこうとなる」と理由を明かし、「仕組みを少し変えてあげるだけでも良くなっていくと思う」と改善を望みます。

生理への理解を広げる団体「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんは、給付型奨学金の拡充の対象が「理工農系」に限定されていることが気になる様子で「学費が高くなるのはわかるが、なんとなく理系至上主義というか、すぐに役に立つものに投資したいという政府の思惑が見える」と推察。

「理系だけでなく文系にも幅広く開くことが今後の日本のアカデミア、社会全体にとっても重要なのではないか」と案じます。

ただ、これに阿部さんは「そういう側面もあると思うが、国際的に論文や業績が評価されているのは理工系」と現状を語り、自身を含めた文系学生のさらなる活躍と、それによって双方が切磋琢磨することを切望します。

◆大学が保証を肩代わりし、地方創生の一助に!

現在、奨学金には2つの保証制度があり、ひとつは「人的保証」で原則的に両親が連帯保証人となります。もうひとつが「機関保証」。これは親族の代わりに保証機関が連帯保証をするもので、奨学金を借りている間は毎月決められた保証料を支払う必要があり、その額は月額10万円を借りた場合、5,406円。4年間で25万円を超える計算で、この保証料は毎月の奨学金から天引きされています。

この制度に小幡さんは「ビジネスとしてはこんなものという感じ。家賃保証などもこれぐらい」と言いつつ、「国はビジネスのつもりでやっているわけではないと思うので、もう少しなんとかならないか」と主張。

谷口さんは「保証制度からも伝統的な家族観を前提にしている感がある」と自身の見解を述べます。両親による保証や出世払いなども含め「これまでの伝統的な働き方、年功序列のようなものを前提としていて、今後家族や働き方が多様化していくなかで、奨学金制度が追いつかなくなってくるリスクもあるんじゃないか」と不安を吐露。

一方で、今の大学生は厳しい状況が続いています。下宿生への仕送りの平均月額は8万6,200円で、ここから家賃などを引くと、生活費は1万9,500円ほど。1日あたりにすると650円。また、自宅から通学する学生は66.6%で、経済的な負担を軽くしようと、自宅から通える大学を選ぶ傾向にあるそう。

そうなると大学が少ない地域では学びの選択肢が少なくなり、前述の中澤教授はコロナ禍でアルバイトの収入も減り、今後学業に影響が出る恐れもあるとしています。

そこで学生にどんな支援が必要か聞いてみると「授業料軽減」、「アルバイトをしているが103万円の壁が大きい。そこの壁をなんとかしていかないと働きたくても働けないし、稼ぎたくても稼げない」、「教科書が2,000~3,000円するものが多いので値下げしてほしい」などさまざまな声が寄せられました。

最後に、Z議会を代表し、阿部さんが提言を発表。それは「首長さん、保証金を肩代わりして!」というもの。

現状、連帯保証は親、もしくは保証機関となっていますが、例えば親に絶縁されている、親の反対を押し切って大学進学を決めたような人は、必然的に保証金を身銭を切って払わなければなりません。そこで阿部さんは「地方自治体の独自の制度で大学側が保証金を肩代わりすることで誘致すれば、若者が減っている地方自治体の促進になると思うので、ぜひ検討してほしい」と訴えます。

阿部さんの提言に、谷口さんは「なるほどと思った。面白い」と感心。「地方の活性化というと就職やその先のことが考えられがちだが、大学時代にいた地域は馴染みがあるというか、愛着心が湧くのですごくいいなと思う」と興味を示します。

また、小幡さんも「若者の移住に繋がるのはいい」と高評価。「今は地方の大学が人材不足、経済的に厳しいところもあるので、それが解決されれば」と期待を寄せます。

番組Twitterには、ネット講義を拡充し、地方にいながら都心の大学の学生になれるようにすれば、わざわざ下宿などをする必要がなくなるのではないかという意見がありましたが、阿部さんは意見を呈します。ネット講義の導入は大切としながら、「ネット講義だと友人同士の偶発的なコミュニケーションが生まれない。一部に限るのかなと思う」と私見を述べました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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