片桐仁もビックリ! 「ざわつく日本美術」でアートの新しい楽しみ方を体験

2021.12.25(土)

11:50

TOKYO MX(地上波9ch)のアート番組「わたしの芸術劇場」(毎週土曜日 11:30~)。この番組は多摩美術大学卒で芸術家としても活躍する俳優・片桐仁が、美術館を“アートを体験できる劇場”と捉え、独自の視点から作品の楽しみ方を紹介します。10月2日(土)の放送では、「サントリー美術館」で“ざわつく”日本美術を堪能しました。

TOKYO MX(地上波9ch)のアート番組「わたしの芸術劇場」(毎週土曜日 11:30~)。この番組は多摩美術大学卒で芸術家としても活躍する俳優・片桐仁が、美術館を“アートを体験できる劇場”と捉え、独自の視点から作品の楽しみ方を紹介します。10月2日(土)の放送では、「サントリー美術館」で“ざわつく”日本美術を堪能しました。

◆片桐も楽しみな「ざわつく日本美術」とは?

今回の舞台は、東京都港区・六本木の東京ミッドタウンにある「サントリー美術館」。1961年に東京・丸の内に開館し、赤坂見附を経て、2007年に東京ミッドタウンに移転。設計は建築家・隈研吾によるもので、“生活のなかの美”を基本理念として漆工や絵画、陶磁器に染織など日本の古美術から東西のガラスまで約3,000の作品を所蔵しています。

片桐は、そんなサントリー美術館で開催されていた企画展「ざわつく日本美術」へ。その意味深なネーミングに「どういう内容か楽しみ!」と期待を寄せます。

この展覧会を企画した同館の学芸員・久保佐知恵さん、教育普及担当の関香澄さんによると、今回の展示は「作品を見たときに心に生じる“ざわめき”をきっかけとし、作品をよく見たくなる、そんな展示の工夫、遊び心のある工夫を試みている」と解説。会場内では、プロローグ・エピローグに加え、全六章に渡ってさまざまな楽しみ方ができます。

◆“うらうら”、“ちょきちょき”しながら美術を楽しむ

まずはプロローグ。会場に足を踏み入れると、片桐は「ものすごく見つめられているんですけど……」と恥ずかしそう。というのも、暗い空間を取り囲むように歌舞伎役者の絵が展示されており、しかもその視線が動いて来訪者を追いかける演出が施されています。

まるでお化け屋敷のような空間に「不気味……ビックリしました。目がずっと合っていますし」と苦笑い。これは「尾上菊五郎」(1875年頃)という役者絵で、写真のようにとても精密ですが、実はリトグラフ(石版画)。

リアルさにこだわり、当時最先端の印刷技術で刷られたもので、明治の人々もあまりの生々しさに抵抗感を感じ、当初シリーズものとして売り出す予定だったが不評で打ち切りになったとか。片桐も「生々しい」と漏らしていましたが、その生々しさから生まれる“心のざわめき”を展示空間に表現しているそう。

そして、第1章「うらうらする」へ。“うらうら”とは“裏”のことで、普段は見られない作品の裏側を美しく見せる展示を試みています。

まずはオランダ人とオランダ船を描いた「色絵五艘船文独楽形鉢」(江戸時代・18世紀)を鑑賞。片桐が「マンガみたいですね……」と印象を語るこの作品は、重要文化財。それを聞き、思わず息を吞みます。

そして肝心の裏側はというと、真ん中には“寿”の文字が。なぜ寿かと言えば、当時の人々にとってオランダ船は珍しいものを運んでくる宝船であり、福の神と考えられていたから。そのめでたさが寿という一文字に込められていると考えられるそうです。

続いては、桃山時代に作られた2つの能面、是閑吉満「能面 小面」(桃山時代・16~17世紀)と是閑吉満「能面 山姥」(桃山時代・17世紀)。これも能役者しか見ることのできない能面の裏側をじっくりと鑑賞できるようになっています。

実際、裏側を目にすると「ちょっと怖いですね」と片桐からは本音がポロリ。そこには「天下一 是閑」という作者の焼印があり、さらに能面というとのっぺりした顔の代名詞ですが、実物は彫りの深いノミ跡などが刻まれ、全くのっぺりしておらず「本物の裏側はこうなんですね~」と感嘆。

裏面を見る姿は、反対から見るとまるで能面を被っているように見えます。今回の展覧会ではほとんどの作品が撮影可能となっていたため、ここではさも能面を被っている様が撮影可。そのため「#能面男子」、「#能面女子」とハッシュタグをつけてSNSで投稿している人も多かったとか。そこで片桐も能面を被っている風の写真撮影に挑戦すると「すごい! 本当に被っているみたい。こんなにうまく撮れるとは思わなかった」とビックリ。

第2章は「ちょきちょきする」。

「波兎模様筒描蒲団地」(大正時代・20世紀)は、もともとは嫁入り道具や大切なお客用の寝具でしたが、それが切断され作品に。日本美術はこのように当初の姿から変化した作品も多く、ここではそうしたものを一部再現展示にし、かつての姿で展示しています。

「日本美術は屏風だったものが掛け軸になったり、いろいろありますからね」と片桐が話すように、このコーナーには重要文化財の伝 藤原信実 画/伝 後京極良経 書「佐竹本・三十六歌仙絵 源順」(鎌倉時代・13世紀)や俵屋宗達 画/本阿弥光悦 書「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」(江戸時代・17世紀)など巻物から掛け軸となったものも展示され、日本美術がさまざまな形に変化しながら伝わってきたことがわかります。

◆“じろじろ”、“ばらばら”、“はこはこ”

第3章は、思わずよく見てみたくなる作品を取り上げた「じろじろする」。

江戸時代に作られた「黒綸子地宝尽竹模様腰巻」(江戸時代・18世紀)は、とても細かい刺繍が施されています。そこに描かれているのは、「打ち出の小槌」や「隠れ蓑」、「隠れ笠」といった12個のお宝アイテムで、それらを探すのも一興。ただ作品を鑑賞するのではなく、ゲーム的な要素を提案することでより作品を楽しむことができ、片桐も「美術館をどう楽しんでいいかわからないという人のいいガイドになりますよね」と感慨深そうに語ります。

そして、サントリー美術館名物の大階段を降りて向かったのは、第4章「ばらばらする」。そこでは硯箱の蓋と身をバラバラに並べ本当のセットを探す、これまたゲーム感覚の展示となっており、挑戦した片桐は見事全問正解。

第5章は「はこはこする」。

そこにはなんと、サントリー美術館が所蔵する唯一の国宝「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」(鎌倉時代・13世紀)が。

しかし、今回はこれをただ展示するのではなく、この国宝を守るための箱も展示。そこには多くの文字が刻まれており、片桐は「耳なし芳一みたいになっていますけど、すごい……。“箱者大将軍”とありますよ! “源頼朝之夫人政子”も」と興奮気味に語ります。その保管用の箱の蓋の裏側には、北条政子が持っていたものであったことが記されています。

◆“ざわざわ”する日本美術の懐深さを表現!

第6章は、この展覧会のメインテーマとなる「ざわざわする」。

この章では、心がざわざわするような作品を集めており、その1つ「袋法師絵巻」(江戸時代・17~18世紀)に注目。何がざわつくかと言えば……「女性の後ろに(男の)人がいますね。さては……」と片桐は何かを感じ取った様子。

片桐の予想通り、これは胸が痛いから早く寝たいと訴えている女性の後ろの赤い大きな袋の下から男の人がのぞいているという、江戸時代の物語の一場面。画面右側にすだれをくぐる人がいますが、その人が袋の下に入り込んだというストーリーで、美しいものだけにとどまらない日本美術の懐の深さを“ざわつく”という形で紹介しています。

こうして「ざわつく日本美術」を堪能した片桐は、「サントリー美術館ということで、日本美術の名品を見ることができるという意味でも楽しいんですけど、美術に触れたことがない人にもわかるようテーマごとにクイズがあったり、老若男女が楽しめるようにしてくれていることに感服しました」と大満足の様子。そして、「日本美術の名品を通じて、美術の素晴らしさ、楽しさを伝えてくれたサントリー美術館、素晴らしい!」と称え、日本美術の新たな楽しみ方を教えてくれた素晴らしい作品の数々に拍手を贈っていました。

◆今日のアンコールは、「色絵松竹梅鶴文注器」

今回の企画展に展示されている作品のなかで、ストーリーに入らなかったものからどうしても見てもらいたい作品をアンコールで紹介する「今日のアンコール」。今回、片桐が選んだのは、「色絵松竹梅鶴文注器」(江戸時代・18世紀)です。

これは江戸時代に海外輸出向けに作られた有田焼の焼き物で、コーヒーやワインを入れ、蛇口をひねって飲めるという容器。片桐は「初めて見ましたし、今後も他で見ることはないんじゃないかと思って」と選んだ理由を説明。さらには「情報がぎゅうぎゅう。蛇口の細かな模様とか、いちいち装飾過多の感じがいいですね!」とその巧みなつくりに圧倒されていました。

最後はミュージアムショップへ。小粋な扇子などをさまざまなグッズを物色しつつ、尾上菊五郎が描かれた人気のポストカード&マグネットセットと黄色とピンクの艶やかな手拭いを購入し、ご満悦の片桐でした。

※開館状況は、サントリー美術館の公式サイトでご確認ください。

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<番組概要>
番組名:わたしの芸術劇場
放送日時:毎週土曜 11:30~11:55<TOKYO MX1>、毎週日曜 8:00~8:25<TOKYO MX2>
「エムキャス」でも同時配信
出演者:片桐仁
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/geijutsu_gekijou/

 

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