知れば知るほど面白い「掛け軸」のディープな世界! 片桐仁が魅力を堪能

2021.10.02(土)

11:50

TOKYO MX(地上波9ch)のアート番組「わたしの芸術劇場」(毎週土曜日 11:30~)。この番組では、多摩美術大学卒業で芸術家としても活躍する俳優・片桐仁が、美術館を“アートを体験できる劇場”と捉え、独自の視点から作品の楽しみ方を紹介します。7月24日(土)の放送では、「板橋区立美術館」で“掛け軸”について学びました。

TOKYO MX(地上波9ch)のアート番組「わたしの芸術劇場」(毎週土曜日 11:30~)。この番組では、多摩美術大学卒業で芸術家としても活躍する俳優・片桐仁が、美術館を“アートを体験できる劇場”と捉え、独自の視点から作品の楽しみ方を紹介します。7月24日(土)の放送では、「板橋区立美術館」で“掛け軸”について学びました。

◆掛け軸中心の展覧会「はじめまして、かけじくです」

今回の舞台は東京都・板橋区にある板橋区立美術館。東京23区内で初の区立美術館として開館し、2019年に全面リニューアル。江戸時代の狩野派の作品の他、大正・昭和初期の前衛美術、さらには板橋区に縁ある作品などを所蔵しています。

片桐は、そんな板橋区立美術館で6~7月にかけて開催されていた掛け軸中心の展覧会「館蔵品展 はじめまして、かけじくです」を鑑賞。

同館の学芸員・印田由貴子さんの案内のもと会場に赴くと、そこには数多くの掛け軸が。そもそも掛け軸とは何かといえば、書や絵を床の間などに飾って鑑賞できるように仕立てたもので、仏教とともに大陸から伝来。その特徴は西洋絵画とは違い、飾らないときは巻いて箱のなかに収めておくことが可能です。

まず片桐の目に留まったのは、狩野秀頼/惟高妙安賛「酔李白図」(1556年)。これは泥酔した中国の詩人・李白を弟子が介抱している図で、画の上には李白について書かれています。掛け軸はこうして絵と書が一緒になっているものも多く、書を読んで絵を見ることで、より絵を楽しむことができます。

また、西洋画でいう額縁に当たる「表層」は色の組み合わせがとても豊富で、絵や書を引き立てるこの表層も掛け軸の大きな見どころ。

さらに、掛け軸の上部には「風帯」と言われる2本のぶら下がったものがあります。これは中国では「驚燕」とも呼ばれており、片桐が「掛け軸を巻いたときに縛るものではないか」と予想するも不正解。

諸説あるものの、中国では燕よけとして鳥が寄ってこないようにと使われていたものだとか。

掛け軸というと一般的に縦長を想起しがちですが、それだけではありません。次に片桐が注目した掛け軸、狩野典信「大黒図」(18世紀)は横長で、とにかく大きな作品です。あまりの大きさに1人では扱うことができず、展示するにも4人がかりだと印田さんは明かします。

これは狩野秀頼と同じ狩野派の狩野典信の作品で、彼は10代将軍・徳川家治や田沼意次に寵愛され、狩野派のなかでも屈指の実力派。その作風は秀頼とは異なり、片桐も「全然印象が違う」とビックリ。画面も横長で、描かれている七福神・大国様がなんとも窮屈そうですが、こうして描くことで親しみやすさが滲み出ている独特な作品となっています。

◆掛け軸の数え方は“幅”、通な楽しみ方を紹介

続いて片桐が向かったのは、掛け軸をセットで楽しむ部屋。掛け軸の数え方は幅(ふく)で1幅、2幅と数えます。

なかにはセットで鑑賞するものもあり、2つセットのものを「双幅」。以降、「三幅対」、「四幅対」と呼びます。

まず片桐が目にした双幅は、河鍋暁斎の「鍾馗ニ鬼図」(19世紀)。「いいですね、かっこいい!」と思わず声が上がり、さらには「右側の1枚でも見られるが、左に鬼が逃げているような絵があるとストーリーを感じますね」とも。まさに片桐の言う通り、双幅は1幅では出せない世界観が楽しめます。

また、双幅は縦書き文化同様、基本的に右から左に物語が綴られ、この他にも左右対称に描いたり、龍と虎など対になるものを描いたり、比較して楽しむものなどもあります。そして、左右の作品を見分けるのは「落款」と呼ばれる作者のサインで、それぞれ外側についており、展示する人はそれを見て判断するそうです。

次に、三幅対の狩野栄信「雪月花図」(19世紀)を鑑賞。これは“雪月花”というタイトル通り、左から「雪」、「月」、「花」の情景が描かれており、片桐が「細密な絵ですね」と感心するように、とにかく細かい作品となっています。

ちなみに雪月花とは、唐の詩人・白居易が詠んだ言葉で特に美しい自然を指し、三幅対のモチーフとしてよく使われているそう。また、これ以外にも三幅対はさまざまで、例えば中央に観音様が配置された大文字屋市兵衛「乙御前鶴図」(18~19世紀)のように真ん中を目立たせるようにしたものもあります。

さらには、四幅対。野崎真一「四季花鳥図」(19世紀)は右から春夏秋冬の花が描かれており、4幅全部かけて楽しむもよし、季節ごとに掛け替えてもよし、さまざまな楽しみ方が可能で、片桐も「粋ですね!」と感服。

四幅対は今回この他に、天気「晴」「雨」「曇」「雪」を描いた司馬江漢の「四時松図」(18~19世紀)も。今回の展覧会では四幅対までですが、多いものだと12幅、なかには百幅の作品もあるそうです。

◆かくも奥深き掛け軸の世界に片桐も感動!

片桐が「これも素敵な絵ですね」と見惚れていたのは、室町時代の禅僧・雪村が描いた「布袋図」(16世紀)。

こちらは1500年代の作品ですが、掛け軸が収められていた木箱まで展示。さらに、木箱の横には文書も展示されており、これは雪村が描いた本物の掛け軸であると狩野派の絵師が認めた鑑定書です。

実はこの鑑定書がある言葉の語源になっています。それは「折り紙つき」。この鑑定書が折り曲げられていることから“折り紙”とも呼ばれ、それが箱についていたことで生まれたそうで、それを聞いた片桐は声を上げて感心しきり。

「館蔵品展 はじめまして、かけじくです」を巡り、「今までいろいろな美術館で日本画を見るたびに掛け軸も必ず見ていたんですけど、今回は掛け軸だけにテーマを絞った展覧会ということでとても勉強になりました」と感謝する片桐。さらには、「当時の人からしたら気軽に掛け替えたりできるものでもあったのかなと。(掛け軸は)かなり身近なものという感じがしました」と感想を述べ、「飾ってよし、保存してよしという掛け軸の文化、そして掛け軸をテーマにした展覧会を開催した板橋区立美術館、素晴らしい!」と大きな拍手を贈っていました。

◆「片桐仁のもう1枚」は、河鍋暁斎の「髑髏図」

ストーリーに入らなかった作品から片桐がどうしても紹介したい作品をチョイスする「片桐仁のもう1枚」。片桐が選んだのは河鍋暁斎の「髑髏図」(19世紀)です。「なんでしょう、この絵は……」と片桐も驚くこの作品は、河鍋暁斎が泥酔状態で描いたと言われている作品。「明治時代の作品なので、西洋医学も広がり精子と卵子があったり、畳の上で描いたから畳の跡が出ていたり。酔っ払って描いた愉快な骸骨が面白い」と褒めつつ、「しかもこれを(同じく河鍋暁斎の)『鍾馗ニ鬼図』と並べるという板橋区立美術館の粋。そこも加味していい絵だなと思いました」と今作を選んだ理由を語ります。

そして最後はミュージアムショップへ。まずは河鍋暁斎のクリアファイルに惹かれた後、片桐の視線はミニ掛け軸に。それは今回の展覧会のチラシを使ってできるもので、片桐も早速挑戦。すると片桐は今夏新たに世界遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」を記念し、板状土偶、遮光器土偶、中空土偶、合掌土偶を描き「縄文掛け軸」を制作。「楽しかった」と笑顔を見せ、大満足していました。

※開館状況は、板橋区立美術館の公式サイトでご確認ください。

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<番組概要>
番組名:わたしの芸術劇場
放送日時:毎週土曜 11:30~11:55<TOKYO MX1>、毎週日曜 8:00~8:25<TOKYO MX2>
「エムキャス」でも同時配信
出演者:片桐仁
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/geijutsu_gekijou/

 

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