五輪・パラ会場が“負の遺産”に? 東京大会の評価&課題は…

2021.09.07(火)

10:10

 13日間にわたって繰り広げられた東京パラリンピックは9月5日に閉幕しました。数々の熱戦と感動を生み出した競技場周辺では早速、一部仮設施設の撤去作業が始まりました。一方で、無観客によるチケット収入の激減など、大会を巡っては多くの課題が残ることとなりました。ジャーナリストの鈴木哲夫さんによる分析も動画で併せてご覧ください。

 13日間にわたって繰り広げられた東京パラリンピックは9月5日に閉幕しました。数々の熱戦と感動を生み出した競技場周辺では早速、一部仮設施設の撤去作業が始まりました。一方で、無観客によるチケット収入の激減など、大会を巡っては多くの課題が残ることとなりました。ジャーナリストの鈴木哲夫さんによる分析も動画で併せてご覧ください。

 まず、コロナ禍の大会開催とコロナウイルスの感染拡大の推移をまとめました。選手を含む大会関係者の新型コロナの感染者はオリンピックで547人、パラリンピックでは306人が確認されました。これについて政府は、大会の開催が感染拡大には直接つながらなかったという見方を示しています。一方、東京都内の感染者数と重症者数の推移を見ると、オリンピック期間中にデルタ株などの影響もあって感染者が急拡大し、パラリンピック期間中には重症者数が高止まりの状況となりました。大会開催がどこまで感染拡大に影響したのかという検証は難しいものの、大会開催によって人々の行動に緩みが生じ、感染拡大につながったのではないかという声も聞かれます。

 続いて、お金の面を見てみます。大会開催によって見込んでいた収入のうち、チケット売り上げの900億円は無観客開催によってほぼ消滅しました。大会組織委員会が賄い切れない費用に関しては基本的に東京都が負担することになっていますが、この大きな“負債”を誰が幾ら負担するのかは、今後問題となりそうです。

 東京都の負担となるのはこれだけではありません。都内に新設された6つの会場のうち、今後毎年の収支見込みの予想を見てみると、黒字となりそうなのは有明アリーナだけです。東京アクアティクスセンターで年間6億4000万円の赤字、海の森水上競技場で年間1億6000万円の赤字、カヌー・スラロームセンターで年間1億9000万円の赤字など、5つの施設を合わせるとわずか1年間で合計10億円以上の赤字となる見込みで、日本中を熱狂させた競技会場が「負の遺産」となる可能性が高まっています。

 関係者には責任の所在も含め、きちんとした議論と検証が求められます。経験や会場を今後どのように生かしていくのか──。大会開催の本当の成功はそこにあるのかもしれません。

 

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