早稲田の杜 コロナ禍で静寂の学生街…伝統と革新で立ち向かう!

2020.05.20(水)

10:50

 新型コロナウイルスの影響は学問の世界にも及んでいます。5万人近い学生が在籍している早稲田大学はキャンパスへの立ち入りが禁止され、授業やサークル活動もままならない状況です。このため、大学の周辺にある学生街の飲食店にも影響が出ています。苦しい状況に立ち向かう人々を取材しました。

 新型コロナウイルスの影響は学問の世界にも及んでいます。5万人近い学生が在籍している早稲田大学はキャンパスへの立ち入りが禁止され、授業やサークル活動もままならない状況です。このため、大学の周辺にある学生街の飲食店にも影響が出ています。苦しい状況に立ち向かう人々を取材しました。

 本来であれば多くの学生であふれる早稲田大学──。しかし新型コロナウイルスの感染拡大のため、4月に行われるはずだった入学式は中止され、現在も学生が大学構内に立ち入ることは禁止されています。

 その影響は教員にも及んでいます。早稲田大学は5月11日からオンラインで今年度の授業を始めました。ただ、対面で行うはずだった授業をオンラインで行うため、教員は準備に追われています。人間科学部の森田裕介教授が参考にしたのは、ユニークな映像で再生回数を伸ばしている「ユーチューバー」です。何度も見返し、編集の技術を研究しました。森田教授は「ユーチューバーが人気を博すのはよく分かる。テンポもいい。学生が見慣れているようなタイプの映像で興味を引きつけたい」と話し「ライバルはユーチューバー。面白い授業を提供したいと思って努力している」と意気込みます。オンライン授業について、学生たちは「共同でみんなで勉強するのが好きなので、最初は寂しい気持ちだった。でも、オンラインで交流する機会を設けてくれる先生がいるのでモチベーションを落とさずにいられる」(藤川希美さん)、「自宅からいつでも気軽に授業に出られる。学びの意欲、意識が大きく変わるきっかけになった」(丸山雅貴さん)などと話しています。

 自宅で授業を受けることができるようになった一方、早稲田の街からは学生の姿が消えました。周辺の飲食店からは悲鳴が上がっています。

 大人数で入れる座敷席があり、低価格でお酒を飲めることで早稲田の学生に30年以上愛されてきた「居酒屋わっしょい」も閉店の危機に追い込まれました。この窮地を救おうと立ち上がったのが、卒業生です。この店で青春時代を過ごした大学OBらが「恩を返す時が来た」と声を掛け合い、クラウドファンディングで1700万円に迫る支援金が集まりました。

 現役の学生からも「早稲田らしさ」を発信する動きが出ています。早大生なら誰もが知っている、うれしい時、悲しい時、一致団結して立ち向かう時などに歌われる早稲田大学の第1応援歌『紺碧の空』を音楽サークルなどに所属する総勢81人の学生がリモートで演奏した動画の発信です。いまだ通学がかなわない新入生に、大学の雰囲気を感じてもらおうと企画しました。4年生の遠藤伶さんは「課外活動も8月1日まで活動自粛。新入生もせっかく入学した早稲田の文化に触れることが一切ない。(動画を見た人たちからSNSのコメントで)『早稲田ってこんなにいろいろな世界があるんだ』『音楽サークルって面白そう』という声があり、新入生にいいきっかけを与えられたのでは」と話しています。

 早稲田の街に学生の姿が戻る日を、多くの人が待ち望んでいます…。

<オンライン授業に新たな可能性 集まり散じても「早稲田愛」>

 森田教授は「新型コロナウイルスによるキャンパス閉鎖は、新しい授業の形を考えるきっかけになった」と話しています。オンライン授業の動画は繰り返して見て復習することができ、字幕を入れることで留学生も理解しやすくなるといったメリットがあります。「今後は基本的な内容はオンライン授業で展開し、対面授業で補っていくのでは」と話しています。

 居酒屋「わっしょい」には、クラウドファンディングで1700万円近い支援金が集まっています。短い期間でこれほど多くの金額が集まることは極めて珍しいということです。クラウドファンディングの返礼品にはTシャツやジョッキなどのグッズや、店を貸し切り宴会できる権利などが用意されています。3万円の寄付で「自分の名前が入った木札を店内に飾れる」権利には150人近くもの希望者がいますが、予想以上の人気に、店内に木札を貼るスペースが不足する恐れも出ています。

 

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