TOKYO MX NEWS

東京で暮らし
働く人のためのニュース番組

都営アパートの住民 立ち退きへ

(五輪 - 2014年10月10日)
 東京オリンピックの開催準備で住み慣れたわが家を失う人がいます。8万人収容のスタジアムへと生まれ変わることになっている国立競技場。その拡張によって立ち退きを迫られている都営アパートの住民の1人を取材しました。
 柴崎俊子さん昭和元年、1926年生まれの87歳。都営霞ケ丘アパートが木造の長屋だったころから60年以上、ここに住んでいます。柴崎さんは「うちは突貫工事で造ったのか何だか知りませんが住みにくい家でした。お風呂がなかったんですよ。都営住宅にはお風呂が付いてなかった。」と話しました。
 江東区深川で生まれた柴崎さんは満州鉄道に務めていた父について戦時中は中国・大連で過ごし、戦後、帰国してからは東京都の住宅局、今の都市整備局の職員となりました。職場結婚だった都職員の夫と管理人としてこの都営住宅に入り、2人の息子さんを育てました。その後、1986年に夫を亡くし、子どもが独立してからはこの部屋に一人暮らしをしています。
 柴崎さんは「でもやっぱり、私たちにしてみれば、ここは長く居るし、子どもたちもここからもう、巣立っていってますしね。ここの学校を出てみんなそれぞれ独立していってるから。ここが故郷。私たちもここがもうついのすみか。ここが私の終焉の場所と思ってましたからね。」と話しました。
 しかし、この東京都からおととし受け取った1枚の通知が柴崎さんの人生設計を大きく変えることになります。通知の内容は「国立競技場の建て替えを行うことを決定しました。移転していただかなくてはならないこととなりました」というものでした。
 2020年東京オリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場。8万人収容、敷地面積はおよそ11万3000平方メートル。今のスタジアムより4万平方メートル拡張され、隣接する霞ケ丘アパートはその影響で取り壊しとなります。住民の立ち退きが必要となったのです。
 通知について柴崎さんは「びっくりしましたよ。本当に。寝耳に水ですもの。いきなりね。通知が何の前触れもなく、いきなり一軒一軒に封書が入ったわけですから。移築になりましたという。そんなばかな話はないじゃないですか。」と話しました。東京都の計画では霞ケ丘アパートにいるおよそ150世帯について来年10月完成予定の神宮前か若松町、もしくはすでにある百人町のいずれかの都営住宅に移転を進めるとしています。しかし何世帯がどこに移転できるのか、いまだに不明です。そして高齢の柴崎さんはなじみのない地域にいくのが不安でいっぱいだといいます。柴崎さんは「まず病院ですね。年取ってますから。病気を皆さん、たいがい1つや2つ抱えてると思うんです。病院が遠いところもある。それから日ごろ親しくしてる人と離れるのは困る。」とはなしていました。
 一人暮らしのため、移転先となる都営住宅は規定で今より小さな部屋。ベッドを置けばいっぱいになり使い慣れた家具や電化製品なども処分する必要があります。移転先には夫の仏壇も持っていくことはできないのではないか、と柴崎さんは不安に思っています。
柴崎さんは「どうしますって、ここ壊されるんですけど。せっかくのね。お父さん、これ困りましたねって。どんな気であの世から見てるかしらね」と話しました。
 先月12日、柴崎さんは今の国立競技場の建て替え工事が始まることに伴う住民説明会に出席しました。しかし、実際の工事業者が出席しないという異例の展開で住民からの不満が渦巻く荒れた説明会となりました。説明会では「説明会に来てるんだよ。まず取り壊しの説明をさせていただきたい聞かないなら帰れよ。ご静聴ください。よろしくお願いします。業者が決まってないのに進行するのか?聞きたくない人は帰ればいいじゃないか」と騒然としていました。9月末に始まるはずだった国立競技場の解体工事は入札手続きのトラブルから工事業者が決まらず、着工は大幅に遅れる予定です。
 柴崎さんは「八百屋さんとかがそこにあった」と話し、柴崎さんは足が悪く、最近は外出するのも近所が多いといいます。また「どうしていいか分からないです。もう年だから、3年の間にここでどうにかなりたいと思う。それが一番の望み。もう越さなくてもいい。とにかく一日でもここに長くいたい」とはなしていました。巨大なメーンスタジアムが建つ予定地の片隅で柴崎さんがついのすみかと話す住み慣れた家を追われるその日が近づいています。
何よりも印象的だったのはVTRの最後にあった「数年の間にどうにかなってしまえば、引っ越さなくても済む。ここを動きたくない」という言葉でした。若い時から本当にご苦労なさって、今はご高齢の柴崎さんに、「どうにかなってしまえば」などと言わせてしまう。非常につらいことだと思いました。きょうは前回の東京オリンピックから50周年。当時から、この都営住宅に住んでいらして、当時は木造の長屋だったんですがオリンピックで「大勢の外国人が来るのにみっともない」などといわれてそのときに一回目の建て替えが行われました。このとき柴崎さんはしばらく仮設住宅に住んだそうですが、大会をきっかけに、住宅がきれいに生まれ変わるということで、非常にうきうきした気持ちでオリンピックを迎えたそうです。ところが今回はそうではないというわけです。
 実は、ある程度若い方を中心にすでにかなりの住民の方は他の住宅に自主的に引越しを終えています。今残っている方は皆さん40年以上、ここに住んでいる方です。今後、いま残っている住民は他の都営住宅に分散して移転するとされていますが、柴崎さんにとっては、何よりもなじみの近所の人が、離れ離れになる可能性が高いというのが一番の不安なのだそうです。おっしゃっていたのが例えば病院にいくとき、1人で行くのが不安だと話しました。では、一緒についてきてくれないかと気軽に頼める。そういう高齢者の住民同士のコミュニティ、助け合いの場というのがすでに出来上がっていたんです。若い人ならば新天地で新しい人間関係を作るということもできると思いますが、高齢の方はそう簡単ではない。
 今回の立ち退きが様々な問題を誘発しかねない、きちんとケアしていけないですね。ただオリンピックは確実に2020年に開催される。また8万人のメインスタジアムを建設するというのも、大会招致の公約になっている。そうなると、後には引けないという面もある。いま柴崎さんはじめ、住民の方はいったい、いつどういう形で、引っ越すことになるのか、全く分からないのです。2年前に東京都が説明会を開いて以来、直接の説明は聞いておらず、一枚の紙を渡されただけです。東京都は都営アパートにある町内会の幹部としか話をしていないそうです。
非常につらいことかもしれない、手間がかかるかもしれませんが、今の居住者すべてをまわって、顔を合わせて、住民の方の疑問や不安に直接答える、まずは東京都にそういう努力が求められると思います。オリンピックの影の部分とも言える新しい国立競技場の建て替えにともなう住民の立ち退き問題でした。

ただ今、放送中の番組

出演者紹介

  • 有馬 隼人 有馬 隼人
  • 田中 麻耶 田中 麻耶
  • 今井 美桜 今井 美桜

ニュース・情報番組

東京マーケットワイド 東京マーケットワイド
毎週月~金曜日(MX2)
8:30~11:40 12:29~15:20
東京インフォメーション 東京インフォメーション
毎週月~金曜日
7:15~7:20
都知事定例会見 小池知事定例会見
毎週金曜日
13:59~(予定)
東京都議会中継 東京都議会中継
HPに放送日掲載